腹部検査の結果の見方
肝臓所見の解説
肝血管腫
肝血管腫血管から構成される肝臓の代表的な良性腫瘍です。ただし、徐々に大きくなることもあり、肝腫瘍との鑑別の為に精密検査が必要な場合があります。
脂肪肝
肝臓に脂肪が蓄積した状態です。内臓脂肪型肥満や飲酒が原因であることが多く、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病と密接な関係があります。脂肪肝は肝硬変・肝細胞癌へ発展することがあります。
肝内石灰化
肝臓にできたカルシウムの沈着です。原因としては、過去肝臓に、損傷、結核、寄生虫、出血などが生じ、一般的には現在は治癒した場合が大部分を占めます。 小さな石灰化、結石はMRIでは描出されない場合があります。
肝内胆管拡張
肝臓内の胆管(胆汁の通り道)が通常より太くなっている状態です。その原因として、腹部超音波検査などでは判別の付かない総胆管胆石や胆管腫瘍などがあります。
肝嚢胞
良性で液体が貯留した袋状の病変です。単発あるいは多発し、通常は無症状ですが、稀に嚢胞が大きくなると腹部膨満感、圧迫感等の自覚症状が認められることがあります。
肝嚢胞性腫瘍
腫瘍内部に液体を伴う腫瘍です。多くは単発でブドウの房様に多房性の構造をとり、嚢胞の壁に腫瘍部分が存在し、悪性の可能性があります。
慢性肝障害
肝障害が継続的に起こっている、あるいは起こっていたことが考えられます。慢性肝障害の原因としては、飲酒、脂肪肝、B型肝炎、C型肝炎、自己免疫性肝疾患などがあります。
胆嚢・胆管所見の解説
胆管拡張
肝外胆管(肝臓から十二指腸への胆汁の通り道)が8mm以上(胆嚢摘出後は11mm)に拡張した状態で、胆管結石や腫瘍の可能性があります。
胆管結石
肝外胆管(肝臓から十二指腸への胆汁の通り道)にある結石のことです。小さな石灰化、結石はMRIでは描出されない場合があります。
胆管腫瘍
肝外胆管(肝臓から十二指腸への胆汁の通り道)にできた腫瘍であり、黄疸をきたすことがあります。
胆管壁肥厚
胆管の壁が厚くなった状態であり炎症や腫瘍の可能性もあります。
胆泥
濃縮胆汁や感染に伴う炎症性産生物のことですが、胆嚢がんなどの腫瘍と紛らわしい所見の場合は精密検査が必要な場合があります。
胆嚢結石
胆汁に含まれるコレステロールやビリルビンなどの成分で作られる結石です。無症状のことが多く、稀に胆嚢炎や胆管炎の原因となります。胆嚢壁の肥厚を伴う場合、結石の後方の胆嚢壁が十分に観察できない場合には、悪性腫瘍との鑑別が必要なことがあります。ただし小さな石灰化、結石はMRIでは描出されない場合があります。
胆嚢腫瘍
胆嚢には良性の腫瘍(多くの胆嚢ポリープ)だけでなく、胆嚢がんなどの悪性の腫瘍ができることもあります。
胆嚢腺筋腫症
胆嚢の壁が全体あるいは限局的に肥厚する良性疾患です。例として、人間ドック受診者の1%前後に認められています。
胆嚢腫大
胆嚢が腫れた状態です。一番多い原因は胆嚢の炎症です。また、胆管結石や腫瘍などにより胆汁の流れが滞った時にも認められます。
胆嚢ポリープ
胆嚢の内側にできる隆起です。例として、人間ドック受診者の10%程度に見られると言われています。10mmを超えた場合は精密検査が必要となる場合があります。
びまん性胆嚢壁肥厚
胆嚢の壁が全体的(びまん性)に厚みを増しています。その原因として、慢性的な胆嚢の炎症などがあります。
膵臓所見の解説
膵萎縮
膵臓が通常より萎縮している状態のことです。なかには病気ではなく、元々膵臓が小さい方もいますが、慢性膵炎で膵臓が委縮している場合には膵液を作る機能が低下していることがあります。
膵管拡張
消化液である膵液は膵臓で作られ、膵管を通って十二指腸に流れます。この流れが妨げられると上流側の膵管が太くなります。原因として膵石や腫瘍の存在も考えられます。
膵腫瘍
膵臓の腫瘍には良性から悪性まで色々な種類の腫瘍があります。代表的な悪性腫瘍である膵がんは、大きくなると周囲の血管などにも影響が出ますが、ごく初期には悪性の特徴を捉えることが難しいことがあります。
膵腫瘤
腫瘍の可能性の低い結節像(炎症後の瘢痕など)を膵臓内に認めます。
膵石
膵管や膵実質内に認められる石灰化のことです。慢性膵炎に認められることが多く、大きくなると石により膵液の流れが妨げられる場合があります。小さな石灰化、結石はMRIでは描出されない場合があります。
膵嚢胞
液体の入った袋状の病変です。膵液が溜まっている場合や、液体を産生する腫瘍ができている場合などがあり、5mm以上の嚢胞や複雑な形の嚢胞は経過観察や精密検査が必要となる場合があります。
膵嚢胞性腫瘍
嚢胞の中にしこりがある場合や、嚢胞の壁が分厚い場合には、嚢胞性腫瘍と記載しています。膵管内乳頭粘液性腫瘍、漿液性嚢胞線腫、粘液性嚢胞腫瘍など、良性の場合も悪性の場合もあります。
膵の変形
膵臓の大きさや形は人により様々で、腫瘍などができていなくても部分的に大きくなっていることもあります。
膵腫大
膵臓が膨れて厚みが厚くなっていることです。病気ではなく、元々膵臓が大きい方もいますが、膵炎などの炎症や腫瘍の可能性もあります。
腎臓所見の解説
腎萎縮
一般的に腎臓の大きさが両側ともに8cm未満の時に、腎萎縮と記載されます。糖尿病の場合を除いて、慢性腎不全になると一般的に腎臓は萎縮して小さくなっていきます。
腎盂拡張
様々な原因で尿の流れが妨げられ、腎臓の中に尿がたまった状態です。中等度から高度の場合は、結石や腫瘍が原因となっていることがあります。
腎血管筋脂肪腫
腎臓に発生する最も頻度の高い良性腫瘍です。腫瘍組織は血管・筋・脂肪から構成されます。基本的には経過観察でよいのですが、腫瘍が大きい場合は出血の危険性もあり、外科的手術の適応となることがあります。
腎結石
腎臓にできた結石です。10㎜以上の結石は経過観察が必要な場合が多く、結石が、尿路に嵌頓して(詰まって)水腎症をきたす場合や、腎盂全体に結石ができるサンゴ状結石などはESWL(体外衝撃波結石破砕術)などの治療が必要となることがあります。小さな石灰化、結石はMRIでは描出されない場合があります。
腎腫瘤
腫瘍の可能性の低い結節像を腎臓に認めます。初めて指摘された場合は良性か悪性かの鑑別のために精密検査が必要な場合があります。
腎石灰化
腎実質に、カルシウムが沈着した状態です。炎症性など様々な原因で石灰化がみられます。小さな石灰化、結石は超音波やMRIでは描出されない場合があります。
腎嚢胞
液体が貯留した袋状の病変です。単発あるいは多発し、加齢とともに発生頻度が増加します。嚢胞が大きく、周辺臓器への圧迫症状や破裂の危険性がある場合や、水腎症をきたす場合(傍腎盂嚢胞)などは治療(外科的手術など)の適応となることがあります。
腎嚢胞性腫瘍
腎嚢胞の壁や隔壁が厚く、内部に充実成分を認める場合には腎嚢胞性腫瘍と記載されます。
腎嚢胞性腫瘤
腎嚢胞の内部に、隔壁(しきり)や石灰化を伴う場合には、腎嚢胞性腫瘤と記載しています。
腎の変形
腎臓は左右に各1個ありますが、先天的に左右で大きさが違う場合や左右がつながっている(馬蹄腎)場合などがあります。
腎腫大
腎臓の大きさが、両側ともに12cm以上の時に、腎腫大と記載しています。糖尿病による腎症では、初期に腫大し慢性腎不全になっても萎縮しないことが特徴です。急性の腎不全や悪性病変で両側腎が腫大することもあります。
水腎症
腎盂拡張が中等度から高度の場合、水腎症と記載されます。
多発性嚢胞腎
腎嚢胞が多発した状態です。先天性と後天性があります。長期透析患者や末期の腎不全患者で高頻度に両側性、多発性の嚢胞がみられます。腎細胞癌の発生率が極めて高い(正常の10倍以上)ことが知られています。嚢胞内に充実成分(白い塊)を認める時は、出血や腎細胞癌の発生を疑います。
脾臓・腹部大動脈所見の解説
脾腫
超音波で脾の最大径が10cm以上の場合を脾腫としています。原因が感染症、腫瘍、貧血、蓄積症(アミロイドーシス、ヘモシデローシスなど)、うっ血肝(肝硬変,バンチ症候群など)、膠原病など多岐にわたります。
脾腫瘍
脾臓に超音波で黒や、白と黒が混ざったしこりがある時に、脾腫瘍と記載されます。脾悪性リンパ腫、転移性脾腫瘍など悪性疾患のことがあります。
脾腫瘤
多くは脾臓の血管が増えてできる良性腫瘍の血管腫などと考えられます。
脾嚢胞
液体が貯留した袋状の病変です。
脾門部異常血管
脾門部に通常はみられない血管を認める場合の総称です。門脈の屈曲蛇行、脾腎シャント、脾動脈瘤など色々な血管の異常が含まれます。原因は先天性のもの、後天性(肝硬変、門脈圧亢進症、膵炎など)のものなどいろいろあります。
脾門部腫瘤
脾門とは、脾臓の内蔵面のへこみをいい、解剖学的には胃・大腸・膵臓・腎臓などに隣接して存在し、血管が流入しています。脾門に存在する腫瘤を脾門部腫瘤と総称します。
腹水
腹腔内に貯留した液体を腹水といいます。性状により滲出性(炎症性腹膜炎、がん性腹膜炎)と漏出性(肝硬変ネフローゼ、蛋白漏出性胃腸症、肝静脈閉塞、心不全、アルドステロン症など)に大別されます。通常でも生理的に100ml未満の腹水が存在しますが、病気などにより異常に増加する場合があります。
副脾
脾臓の近くに脾臓と同じ組織像をもつ1~2cm大の腫瘤のことを副脾と呼びます。
腹部大動脈瘤
心臓が血液を送り出す最も太い血管が大動脈で、その壁がもろくなり膨らんでこぶのように突出したり、風船のようになった状態を大動脈瘤といいます。原因の多くは高血圧と動脈硬化です。5cm以上になると精密検査の上、治療が必要です。
リンパ節腫大
リンパ節が腫れて大きくなっている状態です。短径7mm以上の場合をリンパ節腫大としていますが、10mmまでで扁平な場合には炎症による腫大の可能性があります。それ以外の場合には腫瘍性(悪性リンパ腫、白血病、肉腫、転移性腫瘍など)の疑いがあります。
腹部MRI検査画像の用語解説・見方
DWI(拡散強調画像)
DWIは、癌などの病変が白く(高信号)写る画像のことです。
全ての癌が写し出せるわけではありませんが、高確率で写し出すことができます。
有用性としては、悪性腫瘍及びリンパ節の検出、悪性度の評価をすることができます。
しかし、炎症なども白く(高信号)写るため、良悪性の鑑別には他の画像や検査を踏まえて総合的に診断することが重要となります。
T1強調画像
T1強調画像は、水が黒く(低信号)、脂肪は白く(高信号)写る画像のことです。解剖学的な構造が捉えやすいという特徴があります。腫瘍などで、脂肪や出血、粘液などを含む場合には、白く(高信号)に写ります。
T2強調画像
T2強調画像は水が白く(高信号)、脂肪も白く(高信号)写る画像のことです。多くの病巣が白く(高信号)描出されるため、病変の描出に有用とされています。水を多く含む嚢胞や血管腫は白く(高信号)写ります。
脂肪抑制画像(T1強調画像・T2強調画像)
T2強調画像
T2強調画像(脂肪抑制画像)
脂肪の信号を抑制した(写らなくさせた)画像のことです。T1強調画像・T2強調画像で白く(高信号)写った病変の周囲に脂肪が存在する場合、病変が評価しづらくなってしまいます。脂肪抑制を併用することにより、脂肪で囲まれた病変の評価に有用な画像となります。また、T1強調画像で白く(高信号)写る血腫や出血と脂肪の鑑別や、T2強調画像で白く(高信号)写る水成分の多い病変と脂肪の鑑別に有用です。
横断像(Axial・Transverse)
冠状断(Coronal)
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