医療被ばくについて
放射線を使用した検査(レントゲン検査・胃バリウム検査・CT検査・マンモグラフィ検査)は、病気やケガを正しく早期発見・診断し、次の治療に役立てていく上で必要な検査ですが、X線を使用しているため、放射線被ばくを避けることはできません。検査時の患者様への放射線の利用は、病気を発見するというメリットの方が被ばく等のリスクよりも十分に大きい時のみに行われています。医療被ばくを恐がるあまり、検査を行わないと、適正な診断・治療を受けることができないというデメリットが生じる可能性があります。
当クリニックで使用している放射線の量は、医師の指示の下、身体に影響が出ると言われている量よりもはるかに少ない量を使用し、検査に必要な場所にのみ照射しているので、放射線による身体への影響を心配することはありません。
放射線検査のFAQ
当院での取り組み
- 放射線科医と診療放射線技師で構成された「医療放射線管理委員会」を設置し、X線を使用した全ての検査において日本の診断参考レベル(DRLs2020)以下になるように、被ばく線量の最適化と管理を行っています。
- 放射線被ばくに関する知識をより深めるために、「医療放射線研修」を1年に1回開催しています。
- 学会や研究会での発表や参加を通して、最新技術の習得に務め、日々放射線被ばくを低減するための撮影技術向上に励んでおります。
- 認定資格を積極的に取得し、専門技師を育成し、被ばく線量の最適化を行っています。
当院には、公益社団法人 日本診療放射線技師会認定の放射線被ばく相談員が在籍しております。
受診者様・患者様に安心して検査を受けていただくために、放射線を使用した検査の被ばくに関する不安なことや疑問点にお答えしております。
◎他施設で検査を受けた方・検査を受けるご予定の方は機器・管理状況・検査内容の詳細情報が不明なため、ご質問にお答えできない場合がございます。検査を受けた施設・検査を受けるご予定の施設にお問い合わせください。
◎病状に関する説明および診断に関する質問にはお答えできませんので、ご了承ください。
また、受診者様・患者様及びそのご家族の方に放射線を使用した検査(レントゲン検査やCT検査やマンモグラフィ検査など)を安心して受けていただくために、放射線被ばくに関する不安や疑問にお応えする「放射線被ばくメール相談窓口」を開設しております。
相談には、(公社)日本診療放射線技師会認定の放射線被ばく相談員が基本的には対応させていただきます。
お気軽にご質問をお寄せください。
ご相談をご希望の方は、下記のボタンから必要事項をご入力していただきお申込みください。
当院における主なX線検査での被ばく線量
胸部レントゲン
当院 入射表面線量(mGy) |
|
---|---|
検診胸部(正面) | 0.19 |
マンモグラフィ
当院 平均乳腺線量(mGy) |
|
---|---|
マンモグラフィ | 1.94 |
CT
当院 CTDIvol(mGy) |
|
---|---|
頭部 | 75 |
胸部 | 6 |
胸部~骨盤 | 8 |
上腹部~骨盤 | 7 |
肝臓造影 | 8 |
冠動脈 | 65 |
※当院の結果は、2021年4月1日から2021年9月30日までの線量記録調査結果です
放射線検査のFAQ
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放射線被ばく線量について
『X線検査』について教えてください
X線が人体を透過(通過)する性質を利用して、医療に役立てているのが「X線検査」です。
X線検査には骨折や胸部、腹部の疾患等を撮る「X線単純撮影」、人体を透過しているX線をモニターで観察しながら胃などを検査する「X線透視」、人体の周囲から透過させたX線をコンピュータ処理してあらゆる断面を画像にする「X線CT検査」などがあります。
当院で放射線を用いて行っている検査は、X線CT検査・マンモグラフィー検査・ X線単純撮影(レントゲン検査)・ X線透視(胃バリウム検査)です。
放射線の被ばく線量を表す単位でGy(グレイ)とSv(シーベルト)は同じ意味ですか?
全く違う意味になります。
【補足説明】
専門用語で解説すると、Gy(グレイ)は吸収線量ともいわれ、放射線が人体にあたったときにどのくらいのエネルギーが吸収されたのかを表す単位です。
Sv(シーベルト)は、実効線量ともいわれ、放射線が人体にあたったときにどれだけ健康被害があるのかを評価するために使う単位です。
放射線の単位を雨に例えてみます。空から降ってきた雨によりどのくらい濡れてしまったのか、濡れてしまった量をあらわすのがGy(グレイ)、当たったことにより人体にどのくらいの影響があるのかを数字で表したものがSv(シーベルト)になります。
雨の例えをそのまま放射線に当てはめると、Gy(グレイ)は放射線にどのくらいあたったのか、Sv(シーベルト)は放射線被ばくによりどのくらい人体に影響があったのかを数値として表したものとなります。
当院で撮影している胸部レントゲンの放射線被ばく線量を示します。
Gy (吸収線量)とSv(実効線量)では、放射線被ばく線量の数値が大きく異なります。
全く違う意味になるので、同じ検査でも数値は異なります。
放射線を吸収した線量が同じでも、検査する身体の部位により、放射線による身体への影響も変わるからです。
放射線被ばく線量を確認する際は、放射線被ばく線量の数値だけではなく必ず単位を確認することが重要となります。
吸収線量(mGy) | 実効線量(mSv) | |
---|---|---|
胸部(正面) | 0.19 | 0.05 |
※当院胸部撮影条件より、放射線被ばく線量計算ソフトを使用して算出
吸収線量:SDEC_V6より算出
実効線量:PCXMCより算出
MRI検査は放射線被ばくしますか?
MRI検査は、放射線を使用していないので放射線被ばくをすることはありません。
【補足説明】
レントゲン検査・胃バリウム検査・CT検査・マンモグラフィ検査などでは、放射線(X線)を使用し画像を構築しているので、体に直接的な影響のない範囲で放射線被ばくをします。
一方、MRI検査では、磁石の磁気の力を使用し画像を構築するので、放射線被ばくすることはありません。
放射線被ばくの観点から考えると、被ばくを伴わないMRI検査は安心ですが、検査部位や見たい病気によりCT検査の方が適している場合があります。また、MRI検査は体内金属などによる検査の制限があります。
医療被ばくにおいて、被ばく線量の上限はありますか?
医療被ばくには線量の上限はありません。
【補足説明】
一定の上限を設けることは、医療を制限して患者様に不利益をもたらす可能性があります。本来、治療を始めるために必要なX線検査が、上限を設けることにより実施できなくなってしまう可能性もあります。
そのため。医療被ばくにおいては、被ばく線量の上限がありません。しかし、これは病気を早期に発見・治療できるというメリットの方が被ばくのリスクより明らかに大きい場合が大前提です。
放射線検査の回数について
X線検査は1年間に何回まで受けて大丈夫ですか?
X線検査は、何回までといった制限はありません。
【補足説明】
X線検査を行う時は、医師が必要と判断した場合のみに限定されるため、1年間に何回でもX線検査を行うことがあります。病気の治療をされている患者様では、患部や周囲の観察のために毎月、毎週、毎日、時には1日に何回も検査を受けることがあります。何回も検査を受けることを不安視される方もいらっしゃると思われますが、検査は病気やケガを正しく早期発見・診断し、早期治療に繋がることのメリットの方が医療被ばくのリスクよりも十分大きいと医師が判断した上で実施されます。
検診でCT検査やレントゲン検査を何度も繰り返していますが大丈夫でしょうか?
検査をすることによるリスクとベネフィットを考え、個人で判断する必要があります。
【補足説明】
診療においては、検査を受けることにより、がんなどの病気を迅速・正確に見つけ、適切な処置・治療を受けることができます。
検診においては、特に身体的な症状がなかったとしても、検査を受けることにより「もしかしたら、健康な私でも悪い病気が隠れているかもしれない」という不安を解消し、安心できるというベネフィットがあります。
どの検査でも言えることですが、特に検診においては個人の裁量で検査を受けること、検査を拒否することが可能なので、検査によるリスクとベネフィットを個々によく考え判断することが必要です。
放射線被ばくによる身体への影響
X線検査による被ばくで身体への影響はありますか?
被ばくする線量によって身体への影響がでることもありますが、X線検査で使用する線量では将来の影響を心配する必要はありません。
【補足説明】
X線を受けた部位によって身体への影響は異なります。検査によって放射線が照射された場所に直接おこる障害と、放射線の影響で将来、がんや白血病、遺伝的影響(子孫に影響)がおこる可能性との2つの場合に別けて考える必要があります。
照射された場所におこる障害とは、放射線の影響で髪が抜ける、皮膚が赤くなる、子どもができなくなる(不妊)などの直接的な障害のことです。これらの障害は下表に示す被ばく線量(しきい線量)を超えない限り、おこることはありません。通常の検査で受けるX線の量は、このしきい線量よりはるかに少ない量なので、身体的症状が現れてくることはありません。
次に、がんや白血病、遺伝的影響についての問題です。これに対しては、どのくらい被ばくを受けたら、どのくらいの影響がでてくるのか、はっきりとした物差しはありません。しかし、広島・長崎の原爆被ばく者を対象とした疫学調査では、50~200mSv以下の被ばく線量での影響を心配する必要はないといわれています。これらの調査をもとに考えると、放射線を使用したX線検査では50~200mSvを超える被ばくはほとんどありませんので、将来の影響を心配する必要がないことになります。
放射線の影響 | しきい線量(mSv) |
---|---|
胎児の流産・奇形発生 | 100 |
胎児の精神発達遅滞 | 120 |
皮膚の紅斑 | 3000 |
脱毛 | 3000 |
無月経・不妊 | 3000 |
白内障 | 15000 |
皮膚の潰瘍 | 20000 |
CT検査やレントゲン検査を何度も繰り返しています。放射線は身体に蓄積されますか?また、がんのリスクは高くなっているのでしょうか?
放射線の被ばくは、蓄積されることはありません。 また、当院で行われているようなX線検査で受ける少量の放射線とがんのリスクの関係については、科学的に明らかにされていません。
【補足説明】
たとえ検査の被ばくによりがんのリスクが高くなっているとしても、個人の健康を総合的に考えると、がんのリスクの増加分よりも、検査によって病気やケガを正しく早期発見・診断し、早期治療に繋げることのメリットの方が十分大きくなると考えられます。
また、ある線量を何回かに分けて受けた場合には、同じだけの線量を一度に受けた場合よりもリスクが小さくなることが知られています。
妊娠・授乳について
X線検査やCT検査を受けた後、妊娠していたことがわかったのですが大丈夫ですか?
当院で行っている放射線を使用した検査は、使用している放射線の量が非常に少ないので、基本的には問題ありませんが、主治医にもご相談ください。
【補足説明】
母体が妊娠中に放射線被ばくを受けると、胎児(赤ちゃん)も被ばくする可能性はあります。
胎児期での放射線の影響は、①着床前期(受精後8日まで)、②器官形成期(受精後9日から8週まで)、③胎児期(受精後8週から出生まで)の3つに分類され、それぞれの期間で放射線による確定的影響(がんや遺伝的影響を除くしきい線量※を持つ影響)や確率的影響(がんや遺伝的影響)があります。
どちらの影響も、放射線の量が0.1Gy(100mGy)以下であれば問題ないとされています。
当院で行っている全ての放射線を使用した検査(レントゲン検査・胃バリウム検査・CT検査・マンモグラフィ検査)は、放射線の被ばく線量が0.1Gy(100mGy)を超えることはないので、基本的には問題ありません。
※しきい線量:放射線により体への影響が出始める線量(各確定的影響でしきい線量が決まっています)
放射線を使用した検査を受けることで、将来子供を妊娠しづらくなってしまいますか?
放射線検査の放射線被ばくだけの影響で、将来子供が妊娠しづらくなることはありません。
【補足説明】
放射線影響のひとつに「生殖能力の低下」があります。確定的影響であり、放射線により体への影響が出始める線量(しきい線量)が存在します。しきい線量は、以下の表に示しております。生殖腺に一度に大量の放射線を被ばくすると、一時的、もしくは永久的に不妊症を引き起こすことがありますが、通常の放射線を使用した検査では、下の表のしきい線量を超えることは基本的にはありません。
影響 (副作用・後遺症) |
被ばく線量(mGy) | |
---|---|---|
生殖器 (男性) |
一時不妊 | 150 |
永久不妊 | 3,500~6,000 | |
生殖器 (女性) |
一時不妊 | 650~1,500 |
永久不妊 | 2,500~6,000 |
放射線を使用した検査を受けることで、将来産まれてくる子供(子孫)に影響はありますか?
将来生まれてくる子供(子孫)への放射線による影響は、基本的には心配する必要はありません。
【補足説明】
将来生まれてくる子供(子孫)への放射線被ばくの影響としては、遺伝的影響(確率的影響)が考えられます。
この遺伝的影響(確率的影響)は、どのくらいの放射線被ばくをしたら影響が出始めるといった放射線の量の境界(しきい線量)がありません。
そのため、過去の原爆や原子力発電所関連の事故などにおいて疫学調査が行われ、調査結果がデータとして開示されています。
放射線の人への遺伝的影響の直接的なデータは、チェルノブイリ、広島・長崎の原爆被爆者子孫の疫学的調査のデータが参考とされますが、現在まで人で遺伝的影響は確認されていません。
また、放射線を使用した検査で受ける放射線被ばくの量は、各疫学調査に比べ非常に少なくほとんど無視しても問題ない量です。
以上のことから、将来生まれてくる子供(子孫)への放射線による影響は、基本的には心配する必要はありません。
妊娠中または授乳中に、放射線を使用した検査(レントゲン検査・胃バリウム検査・CT検査・マンモグラフィ検査)を受けました。母乳をあげた場合、赤ちゃんに放射線の影響はありますか?
放射線を使用した検査では、放射性物質が体内に蓄積されることはありません。検査直後から赤ちゃんに母乳をあげても問題ありません。
【補足説明】
放射線による被ばくは、レントゲン検査やCT検査のように外から放射線を浴びる"外部被ばく"と、放射性物質を含むもの(食物や核医学検査に用いられる放射性医薬品など)を摂取または注射し、体内から放射線を浴びる"内部被ばく"とに分けられます。
外部被ばくでは、放射性物質が体内に蓄積されることはありません。そのため、母乳に放射性物質は含まれないので、放射線を使用した検査(レントゲン検査・胃バリウム検査・CT検査・マンモグラフィ検査)を受けたお母さんの母乳を赤ちゃんが飲んでも、母乳により赤ちゃんが放射線被ばくすることはありません。
その他
「被曝(被ばく)」と「被爆」は同じ意味ですか?
全く違った意味になります。
【補足説明】
「被曝(被ばく)」とは、放射線にさらされる(曝される)ことを意味しています。
医療で使用される放射線を使用したレントゲン検査・胃バリウム検査・CT検査・マンモグラフィ検査や、福島第一原子力発電所の原子力事故なども、この「被曝(被ばく)」が使用されます。
「被曝」と「被ばく」は同じ意味で使用されていて、「曝」は常用漢字ではないので「被ばく」と表記されることが多いです。
「被爆」とは、一般的には原子爆弾などによって被害を受けることをいい、爆弾により光線・熱線・爆風などの影響を受けるため「被爆」が使用されています。
子供は放射線を使用した検査を受けても大丈夫ですか?
放射線被ばくによって、お子さんに放射線の影響が出ることは基本的にありません。
【補足説明】
放射線を使用した検査の必要性や病気の診断に役立つ情報が得られるメリットと、放射線被ばくすることのデメリットを比較し、検査のメリットが上まわる時のみX線検査を行います。
X線検査で受ける放射線被ばく量は、各影響が現れる放射線量よりもはるかに少なく、ほとんど無視しても問題ない量です。
お子さんの放射線被ばくによる影響を心配されるお気持ちもよく分かりますが、必要な検査を受けないことにより、お子さんの命に関わるような病気を見落としてしまう可能性もあります。
また、X線検査を受けることで、病気の早期発見や病気がなかった時の安心感を得ることができるというベネフィットもあります。
お子さんに放射線の影響が出ることは基本的にはありませんが、検査の必要性については、担当医にも相談し、安心して検査を受けて頂くことが重要です。
参考文献・参考資料
・ 草間朋子:あなたと患者のための放射線防護Q&A,医療科学社,1996
・ 笹川泰弘,諸澄邦彦:医療被ばく説明マニュアル(患者と家族に理解していただくために),日本放射線公衆安全学会,2010
・ 放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(平成30年度版),環境省 放射線健康管理担当参事官室
・ 国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構,放射線被ばくに関するQ&A
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